先月、下村文部科学大臣をはじめとする文部科学省によると、現在法令化されている
公立小中学校の「学校週5日制」の見直し(学校週6日制に移行)について検討段階に
入ったとのことです。
詰め込み教育から脱却し、子どもに生きる力を養うため「ゆとり教育」という理念を
旗印に2002年から公立小中学校5日制で完全実施されてから10年あまりでの幕引き
となりそうです。
このゆとり教育の実施のために、多くの小・中学生が塾だけでなく、お稽古事に励み
一週間みっちり予定が詰まっていて、疲れた表情をしている生徒を見ていると、
これがゆとり教育か~と思ってしまいます。。。この生徒は、塾の授業中時より声を
張り上げてしまうときがあります。。。明らかに、ストレスになっているのでは?
また、昨年の調査で明らかになったのが、小中学生の自殺者が200人を超えるなど、
ゆとり教育とはどうなのでしょうか?
「ゆとり教育」と「学校週6日制度」について、皆さんからの意見をぜひお聞かせください!
これの前に文科省では、グローバルスタンダードに対応するためか、学力重視型
(理系科目などの学習時間の大幅拡大)の新学習指導要領が一昨年度から公立
小中高等学校で順次改訂され実施されています。
たとえば、中学校について新学習指導要領への改定による完全実施が平成24年度と
まさに今年度からであり、具体的な変更点としては、標準年間授業時間数のうち、
主要5教科の授業時数が、中学3年間で合計360時間も増加することになりました。
(以下、表を参照)
★ 各科目の授業時間数の増減(中学3年間)★
問題は、学習時間が20年前に戻っただけでなく、学習内容も大幅に増えているにも
かかわらず、指導時間数が学校週5日制度では、現場の声として不満があがっている
のが、教えられる許容範囲を超えてしまっている点です。
もとより、これより以前にゆとり教育で育った生徒にしても、現状の週5日でボリューム
のあるカリキュラムを吸収するのは厳しいものがあります。新課程により「量」も「時間」
も増えるわけですから、学校の授業時間数や体系も変更が生じます。
ですので、今回の「学校週6日制度」への変更検討というのは、新政権の目玉政策と
いうものではなくごくごく必然的な話であるものと考えます。
学力云々ということではなく、物理的な問題として
そんな中、受験シーズンの真最中でありますが、あるショッキングな数字と実態が
明らかになってきたのではないかと感じる出来事、今年の大学入試センター試験の
国語の平均点が過去最低の101・04点(昨年比▽17点)であることが同センターの
集計結果により判明しました。
新聞等の論調を見ますと、予備校関係者からの意見を載せ、出題された小林秀雄
という批評家の随筆的な文章に学生は例年の過去問から出題される文章形式
(評論文)と異なったために、学生が少しパニックに陥り点数を落としたのではないか
というものでした。加えて、文章の中身は特段に難しいわけではないともありました。
注目したいのは、記者のコメントにあるように、30年ほど前はよく大学入試に出題
されていたということです。
今回のテーマでもありますが、ゆとり教育で育った学生の学力<読解力>の低下
に起因しているのではないかと感じざるを得ません。
<参考:毎日新聞2月8日東京朝刊より>
ゆとり教育が完全実施された、2002年頃、小生は米国ボストンに留学時、
マサチューセッツ州の上にあるニューハンプシャー州のマンチェスター市という
自治体の市長室でインターンをしていた際に参加した会議で、これからのパブリック
教育で、ブルーカラーと呼ばれる普段作業服を着た現場の作業員などの現業系や
エンジニア系の職種を目指す学生には「読解力」(理解するチカラ)を指導することが
とても重要になると、ニューイングランド地域の教育会議の場で声高に言われて
いました。
一方日本では、世界に誇れる「ものづくり日本」を復活させるためにも、理数系に
強い教育づくりが大事だなんて叫ばれています。(ちなみに、川口市でも鋳物のまち、
ものづくりのまち川口の復活のためにも、市内市立3高等学校を統合し、近い将来
理数系に強い高校づくりをすると言っていますが・・・)
しかし、理数系に強くといっても結局理解する力がまずベースなわけで、つまり
これは「読解力・論理的思考力」であり国語という教科がいかに大切で、高度な
研究をして技術の習得や社会的影響のある発明を将来するかも知れない学生を
養成する高等教育機関に入る前の初中等教育の段階で、科学的に分析・理解
する力をいかに養えるかということです。(本屋さんに行くと『ロジカルシンキング』
という類の本が最近ずらりと並んでいるのが目に付きます。)
ちなみに、埼玉県に限らず全国的に国語への手厚い指導、図書館の活用方法
<公立小中学校の図書館に専任の司書がほとんどいない!>など読解力の
向上となる勉強が、ここ数年間でも減少傾向にあり、中学になると激減することが
文科省の調査からもわかります。
ただ、埼玉県の場合、小学校の学力調査と中学校の学力調査と比較した場合、
全国47都道府県で前者が30位に対して後者が41位と極端に低く出る<首都圏では最下位>
要因には、下記の調査結果から見ると、「国語」に対する課題に
費やす時間が小学校から中学校にかけて激減していることがわかりこれと呼応しているのではないかと考えられます。
また、理科と数学については、埼玉県の場合全国平均より、それぞれ
1.0ポイントから最大2.8ポイント、0.8ポイントから最大2.9ポイント下回っています。
埼玉県がいわゆる理数系の学力で他都道府県より弱いのは、上記でも述べた
とおり、理数系にも必要な「読解力」向上に費やす時間が著しく低下していることも起因しているがために
、理科・数学の学力が比較的劣ってしまうのではないでしょうか。
そのくせ、埼玉県の県立高校入試の数学の問題は全国でも指折りの難問であると
評判です!
ぜひ、埼玉県の教育委員会には、理数系を強くするという高貴な目標の前に、
国語力の向上につながる方策を考えていただきたいものです!さらに、公教育の充実を含めて、公立小中学校には学校図書館への専任司書の設置を検討して
もらう必要があります!