2013/06/26

~埼玉県の救急救命対応改善と医師不足解消を!①~   県内の全救急車にタブレット端末を導入へ、ただこれまでのシステムにいくら税金を投入?

 現在行われている、6月の県議会定例会に提案している補正予算中に、
救急患者を医療機関に受け入れ可能かどうどうかをリアルタイムで検索
できるタブレット端末を導入し、県内のすべての救急車に配備端末300台
の導入費用として、およそ3,000万円を盛り込んだ、埼玉県の上田知事は
説明しています。

 今年1月に、久喜市の当時75歳の男性が救急搬送の受け入れを合計
36回断られ、約3時間の末、茨城県にある搬送先の病院で亡くなり確認
されたことを契機に、これまでも問題とされていたいわゆる「搬送患者の
たらい回し」を改善するために、今回の導入を急がせたものです。
ただ、たらい回し問題の根本解決はタブレットなのでしょうか?

 このタブレット端末導入にあたり、県では県内の救急医療病院の空き
ベッド数や診療科目などの情報がリアルタイムにわかるものを開発する
とのことですが、下図の佐賀県の先進事例でもあるように、基本的には
消防の救急隊員がいつ、どこで、どんな患者をどの病院に搬送したかを
搬送後、iPadで入力するそうです。つまり、消防隊の方が入力をするか
どうかでこちらの運用が大きく変わるわけであります。














出典:佐賀県

 また、これらの搬送実績を蓄積する事で、医療機関側と消防側と
24時間リアルタイムで情報が共有することが可能となります。
                                                                                  
 さらに、消防隊は搬送実績を参照する事で、受け入れ可能                           な医療機関への搬送時間を(1分)短縮するが出来たとの事です。
                            
 では、これまで埼玉県の救急救命医療の情報システムはどのように
なっていたのでしょうか。
 県議会からの保健医療部長の答弁を見ますと、現在までの救急
医療情報システムは、「医療機関が患者の受け入れの可否やベッド
の空き状況などを入力し、その情報を消防機関が本部で確認して
活用してまいりました。平成22年には、消防機関が医療機関に
情報を確認して入力ができるように改修をし、情報の精度を高める
工夫を行ってまいりました。しかしながら、タブレット端末など
モバイル機器を活用できるシステムではないため、消防機関が、
救急搬送の現場で、医療機関の受け入れに関する最新の情報を
把握できるまでには至っておりません。」と、あるように結局の
ところシステムの運用が出来ていなかったことを県は認めています。

 システムを構築する際に、きちんとした要件定義もなくして基盤だけを
(どのように運用して活用していくかまでを考えず)構築してしまった
結果、数十億円もの多額の税金をこのシステムに投入されたことを
考えると県議会でぜひ指摘すべきではないでしょうか。
 小生も市議時代に、川口市立医療センターの理事者に患者搬送の
「たらい回し」と県の救急医療情報システムについて、ヒアリングをした
ことがあります。

 そこからわかったことは、救急医療情報システムは、救急車の中に
インターネットシステムがあるわけではないので、情報が病院側に
あっても瞬時に救急車側に伝えることができず、結局消防の救急隊が、
(朝夕の2回、医療機関の情報を紙に印刷して救急車で持ち歩き
<埼玉県の場合>)、患者搬送の際に電話で各病院側に問い合わせ
している状況にありました。

 一方、救急救命センターの医師は、搬送患者の対応が忙しく物理的
に不可能であるなど、医療機関側にしたらこんな煩雑な作業を病院側
に求めるシステムの運用に問題があるのではというものでした。
  また、たらい回しにつながる問題では、搬送患者側の問題もあるの
ではないかというものです。そもそも救急搬送が必要でないのに救急車
を呼ぶ、いわゆる救急車の「Cab化」です。消防庁によると、救急車で
搬送された人の約半数が入院を必要としない軽症であり、この救急車
利用の近年の増加により、救急隊の現場への到着時間の遅れが生じて
います。

 加えて、搬送中の患者側から「△△病院はいやだから、○○病院に
行ってくれないと困る」という理不尽な注文ケースもあるそうです。

 ・・・次回は、患者搬送の「たらい回し」問題の根本的原因について

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